「凱風快晴」について

「凱風快晴」（がいふうかいせい）は、葛飾北斎の名所浮世絵揃物『富嶽三十六景』全46図中の1図で、「赤富士」（あかふじ）とも呼ばれています。「神奈川沖浪裏」「山下白雨」と合わせて三大役物と呼ばれています。富士を大きく正面から描いた作品で、画面下には樹海、空にはいわし雲が描かれ、富士の山頂には雪渓が残っています。
「凱風」とは「夏に吹く柔らかな」南風を意味します。
この「凱風快晴」の大きな特徴のひとつが、富士の山肌に見られる版木の木目です。
版木の木目を使い、単調になりかねない富士山容の表現に、空気の流れまでも感じさせる大きな変化を与えていています。

世界が認めた天才・葛飾北斎について

葛飾北斎は江戸時代後期の浮世絵師です。19歳で勝川派の頭領である勝川春章に師事し絵師としての活動を始めて以降、70年間に渡って3万4千点を超える作品を発表しました。版画のほか、肉筆浮世絵、黄表紙、読本、狂歌本、絵手本、春画などあらゆるものを描き尽くそうとした北斎は、西洋由来の絵画技術にも大いに興味を示し研究を重ねました。 北斎の画業は欧州へと波及し、「ジャポニスム」と呼ばれるブームを巻き起こして19世紀後半のヨーロッパ美術に大きな影響を及ぼしました。 1998年にアメリカの雑誌『ライフ』が企画した「この1000年間で最も偉大な業績をあげた世界の100人」に日本人として唯一のランクインを果たしたことによりその国内外における人気の高さを知らしめました。 名作「神奈川沖浪裏」・「凱風快晴」などのシリーズ「富嶽三十六景」を発表したのは、なんと70歳を過ぎてから。そこには半世紀の画家人生の研鑽の成果が注ぎ込まれていました。